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東京ガスが空間コンピューティングに「即決」投資 ――Apple Vision Proの体験から得た確信とは

February 18, 2025

東京ガスが空間コンピューティングに「即決」投資 ――Apple Vision Proの体験から得た確信とは

■事業領域を超え、バリューを探る中で出会った「空間コンピューティング」 

東京ガス株式会社 執行役員 総合企画部長 清水 精太氏

――まず、東京ガスさまの事業内容について教えていただけますか。 

清水:「東京ガス=ガス・電力事業の会社」といったイメージが強いと思いますが、他にもさまざまな事業に取り組んでいます。エネルギー関連機器やソフトウェアの事業や、海外での発電事業、ガス田の開発事業などです。また最近では都市ビジネスと呼ばれる不動産事業も手がけています。 

その中で、私は総合企画部に所属し、全社の予算管理、事業計画立案、リスクマネジメント、さらにはM&Aを含めた新しい事業領域の探索など、幅広く担当しています。 


 

――昨年、貴社のご協力のもとMESONが開発したApple Vision Pro向け3Dモデルビューワー『FlexiViewer』を「Japan Energy Summit & Exhibition 2024」のブースで展示していただきました。最初に清水さんが空間コンピューティング技術にご興味を持たれたきっかけはなんだったのでしょうか? 

清水:お堅いインフラの会社だと思われがちな当社ですが、我々にも「世の中を驚かせて、良い影響を与えたい」という思いがあります。  

だからこそ、新しいテクノロジーには常に敏感であるべき。お客様に付加価値を提供して事業を成長させるためには、自社の業界とは異なる領域のトレンドも押さえておく必要があります。 

その中で以前からAR/VRにも注目していました。ただ、メディアで取り上げられている様子を見るだけでは、自社の事業にどう活かせるのか、想像がつきませんでした。 

ところが、MESONのオフィスで実際にApple Vision Proを体験したことで、「これは当社にとってもバリューになる」と確信しましたね。そこで空間コンピューティングの導入を即決しました。 
 

小林:すごいスピード感でしたね(笑) 

それまでのVR技術と比べてApple Vision Proは、技術的にも大きく進化しています。実際に体験するとその没入感の高さに驚きますよね。 

Apple Vision Proの体験イメージ



清水:2021年ごろに体験したほかのVRデバイスとは全く違いました。僕はヘアスタイルにこだわりがあるタイプで、ヘッドセットで髪が崩れるのが嫌なのです(笑)でもApple Vision Proにはそれを超えるバリューがあるから、髪の乱れも気にせず装着してしまいました。 

BtoBでは何か新しいものを導入する際、スイッチングコストが懸念になるのですが、それを解消するのもやはり突出したバリューです。 


――当初は、どのような活用イメージを想定されていましたか? 

清水:空間コンピューティングの強みである「没入感」を活かすことで、一般の方にとってはあまりなじみのない我々の事業内容を、より広く、かつ印象に残る形で伝えることができると思いました。そのため、お客様とのコミュニケーションにも役立ちそうだなと。 

MESON代表 小林

小林:僕も、空間コンピューティングのアプリケーションの価値はそこにあると思います。 

 というのも空間コンピューティングは、理解だけではなく、感動も一緒に与えることで、今までのメディアでは伝えることができなかった商品の価値を届けられる可能性がある。今回『FlexiViewer』を体験した方も、俯瞰の視点と没入の体験をシームレスに切り替えられることに「WOW感」を感じられたと思うんですね。 

 その意味では、マーケティングやセールスの領域で特に大きな力を発揮するでしょう。東京ガスさんの他の事業や商品も、空間コンピューティングを通して生活者や企業の方に印象づけて伝えられるのではないかと思います。 

清水:お客様も常に我々の発信する情報に関心を持っていらっしゃるわけではないですし、情報を取得して選択することはお客様にとってサーチコストでもあります。 

それが、空間コンピューティングを通すと、その瞬間だけは我々が訴求したいコンテンツに没入してもらえる。おっしゃる通りマーケティングとしても可能性を期待できます。 


■リアルを超えたバーチャル体験 

――今回展示された『FlexiViewer』、およびその中のカスタマイズコンテンツについて、改めて詳細を教えてください。 

清水:今回「Japan Energy Summit & Exhibition 2024」で『FlexiViewer』を通じて展示したのは、当社が出資している「浮体式洋上風力発電」を再現した3Dモデルです。実際にポルトガルの発電所にある施設を3Dモデル化し、Apple Vision Proで没入的に体験できるようになっています。 

ポイントは、単純に全風景が見られるだけでなく、体験者の意志で特定の部位に近づき、詳細に見られることです。実際にポルトガルの現地に行っても全体像しか見ることはできませんが、今回のアプリでは現実ではあり得ない角度からも施設を確認できる。リアルの体験を超えたバーチャルの体験を実現しています。 

『FlexiViewer』のデモ映像(船舶モデルver.) 

 

小林:リアルとバーチャルのいいとこどりと言えますね。体験した方や社内の反応はいかがでしたか? 

清水:Japan Energy Summit 2024のブースで展示したのですが、多くの人だかりができるほど好評でした。テレビのニュースでも取り上げられて、想像通りの手ごたえでした。 

また、社内でも話題になり、洋上風力発電の事業責任者からも非常に喜ばれました。 

我々の先進的な取り組みも、皆さんに知っていただかないことにはやっていないことと同じになってしまいます。効果的に世の中に発信していくためにも、空間コンピューティング技術を活用することは大いに意味があると実感しました。 


――MESONとプロジェクトを進める過程はいかがでしたか? 

清水QCD(クオリティ、コスト、デリバリー)のトータルバリューが、とにかくすごかったです。「もう来月できちゃうの?」という速さで、品質の高いものを完成させてくださいました。 

これが実現できたのも、開発の過程でのコミュニケーションがきわめて良好だったからだと思います。 

というのも、「浮体式洋上風力発電」なんて、普通は皆さん知らないものですよね。耳なじみのない領域のプロダクトを、一から理解し、我々の要望通りのコンテンツに仕上げていただきました。 

もちろん提供した資料や写真はありつつも、それらをうまく統合して、期待通りのコンテンツを実現してくださった。そのコミュニケーションのスムーズさがありがたかったですね。 

小林空間コンピューティングは、今まで写真や動画では伝わりきらなかった大きなもの・複雑なものと相性がいいと思うんですよね。今回の「発電機」のようなインフラ機器の分野もその代表例です。 

なので、MESONの開発者たちもコンテンツ対象をきちんと理解して、わかりやすく伝えることを大事にしています。今回東京ガスさんから詳しい資料などをいただけたのは、僕らとしてもありがたかったです。 


――MESONに、今後どのようなことを期待されますか? 

清水:今回の取り組みで、空間コンピューティングの大きな可能性を感じました。 

しかし、世の中にはまだ受動的な使われ方が多い印象です。もっとアクティブな使い方として、当社のようなエネルギー会社なら、技能訓練や研修に活用する方法もあるかもしれません。 

今後もMESONさんと一緒にリサーチを進めつつ、今度はインタラクティブなコンテンツ開発ができたらうれしいです。 


 

■空間コンピューティング×AIで広がる可能性 

『FlexiViewer』に生成AIを組み込むことで、魚に質問ができるように

――今後、東京ガスさまでは空間コンピューティングをどのように活用していくか、展望はありますか?

清水:例えば、実際にお客さんにデバイスを付けてもらってセールスに活かす、といった活用の可能性もあります。展示会での様子を見ても、これだけユーザーが没入して集中できるコンテンツは他にない。そのためマーケティングやセールスツールとしての活用の道はあると思いますね。 

また、こうした空間コンピューティングの体験にAIを加えると可能性が広がるのではないかという期待感を持っています。我々の持つデータベースを基に、AIがコンテンツをダイナミックに変化させていくような体験が実現できると面白そうです。 

 

小林:先ほど清水さんがおっしゃった、技能訓練を空間コンピューティングでバーチャルに行う中でもAIが活用できそうですよね。質問があったら教官ではなくAIが東京ガスさんのデータベースにアクセスして、代わりに答えるような仕組みも実現できそうです。 

清水:そうですね。AIがベストな対応にガイドしてくれるといいのかもしれません。例えば、災害対応の際に過去の事例から最適解を引用してくれたり、お客様先での機器の取付作業の際、より効率的な方法を提案してくれたりすると魅力的です。 

人材不足の中で、我々も社員一人一人のキャパシティを広げていくしかない。その中で没入感のあるデバイスによる訓練や、AIのサポートが一助になる気がしています。 

 

小林:空間コンピューティング×AIで何ができるか、僕らも社内で研究しています。その中で、空間コンピューティングの没入感を阻害しないインタラクションが、AIなら実現できると感じています。 

というのも、せっかくイマーシブな体験に集中している最中に、デバイスの操作を求められたり、文字を読む必要があったりすると、没入感がそがれてしまいますよね。AIで人と話すようにインタラクションをすることで、没入感を保ったまま情報を受け取ることができると思うのです。 


■資金調達の背景  

――今回、MESONは東京ガスさまより資金調達を完了しました。今回の資金調達の背景について、お聞かせください。 

小林:「FlexiViewer」の取り組みがあった後に、僕から「資金調達させてもらえませんか」と清水さんにご連絡したんですよね。 

清水「いいですよ」と即答しましたね。それは、空間コンピューティングやMESONさんの技術が、世の中に大きなインパクトを与えることを確信していたからです。当社もMESONさんと同じ船に乗って、その技術の発展にコミットする価値があると判断したわけです。 

冒頭にお話しした通り、お客様に付加価値を提供し事業を伸ばしていくためには、新しいテクノロジーを取り込んでいく必要があります。そのテクノロジーが盛り上がる最初に、そして最先端で起こっている変化に敏感にならなければなりません。 

その中で、全部の最新技術に飛びつくわけでもありません。人間が価値を感じる、本質を突いた技術かどうか。また、我々の事業の付加価値を高めるピースとして、はまるかどうかを見極めて判断しています。 

空間コンピューティングの技術は、そういった観点からも高く評価できると考えました。 

小林:東京ガスさんは多様なドメインの商品を抱えていて、中には複雑だったり一般にはなじみがなかったりするものもあります。そういった商品を空間コンピューティングでわかりやすく消費者の方に届ける、あるいは従業員の方に理解していただく取り組みは、他の日本企業の参考にもなると考えています。 

「東京ガスさんでそういう成果を上げられてるんだったら、僕らもやってみよう」と、他社が空間コンピューティングを活用する後押しになるのではないか、と。そういった意味でも、東京ガスさんとのこれからの挑戦は、社会的にも非常に意義があると思います。 


――最後に、MESONや読者の皆様へのメッセージをお願いします。 

清水:我々も空間コンピューティングの可能性に大きな確信を持っています。サービスとして直接お客様に届ける文脈でも、マーケティング・セールスツールのような間接材としての文脈でも、トータルに活用可能性を高く評価しています。 

これからもMESONさんとの密接なコミュニケーションの上で、空間コンピューティングを使った新しい価値を創造していきますので、皆様も楽しみにお待ちいただければ幸いです。 

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MESON(メザン)は、あらゆるセクターでプロダクト共創を実践する、空間コンピューティングカンパニーです。異なる視点、専門性、業界業種を超えた共創を起点に、空間コンピューティングを社会へ拡げています。

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